膀胱がん

膀胱がんとは

膀胱は、おへその下、下腹部に位置し、腎臓で作られた尿をためる臓器です(図1)。膀胱の内側にある、尿路上皮と呼ばれる粘膜から発生した悪性腫瘍のことを、膀胱がんといいます。年間、人口10万人あたり約17人が膀胱がんになり、年齢とともに発生リスクが高くなります。男性に多い癌です。発生のリスクファクターとして、喫煙、化学物質(4-アミノビフェニル、ベンジジン、2-ナフチラミン、シクロフォスファミド等)、尿路感染(ビルハルツ住血吸虫)などが知られています。
症状は無症候性肉眼的血尿と言われ、血尿が出るだけです。一度でも血尿を自覚されたら泌尿器科を受診してください。診断のためには膀胱鏡検査を行います。
膀胱癌は非筋層浸潤癌と筋層浸潤癌に分類され、非筋層浸潤癌が全体の70%を占めます。非筋層浸潤癌と筋層浸潤癌では治療方針が大きく異なります。
この診断は画像では難しい場合もあり、診断かつ治療も兼ねて経尿道的膀胱腫瘍切除術(TUR-BT)を行います。

図1:膀胱の解剖学的位置

図2:膀胱がんの深達度
(表在性がんと浸潤性がん)

膀胱がんの進行具合を病期(ステージ)で分類し、治療方法を決定します。具体的には、膀胱鏡の所見、CT、MRIなどの画像所見により、T(膀胱がんの深さ)、N(リンパ節転移の有無)、M(肺、肝臓、骨などの遠隔転移の有無)の三つの要素を判断し、病期を決定します。
Tステージである膀胱がんの深達度(病巣の深さ)は、経尿道的膀胱腫瘍切除術(別項参照)の病理結果により、CIS、Ta、T1、T2、T3、T4と分類されます(図2)。そして、がんが粘膜から粘膜下層にとどまっているCIS、Ta、T1を「表在性がん」、筋層に及んでいるT2以上を「浸潤性がん」に大きく二分し、治療法が検討されます(図3)。

筋層非浸潤性膀胱癌の治療

経尿道的膀胱腫瘍切除術(TUR-BT)とは

膀胱鏡(内視鏡)を用いて行う手術で、ループ型の電気メスを用いて膀胱内の腫瘍を切除します。
内視鏡で手術を行うため腹部を切り開く必要はなく、比較的、身体の負担が少ない手術と言えます。
下半身のみの麻酔(腰椎麻酔)で行うことが多く、手術時間は1時間以内のことがほとんどです。全国的に普及している手術方法です。

図4:経尿道的膀胱腫瘍切除術(TUR-Bt)

手術後は?

① 入院中

腫瘍を切除した部分は一時的に粘膜が薄い状態になるため、尿道カテーテルを数日間(1-7日間)留置します。手術直後もしくは翌日に抗癌剤の膀胱内注入療法を行います。尿道カテーテルを抜去して、翌日に排尿が普段通り行えることを確認して退院となります。

② 退院後

腫瘍が癌(悪性腫瘍)だった場合は、癌細胞の顔つきの悪さ(悪性度)・癌が膀胱粘膜のどこまで浸潤しているか(深達度)に応じて、追加治療を行うことがあります。
追加治療にはBCGの膀胱内注入、2nd-TUR(もう一度TUR-BTを行うこと)、膀胱全摘があります。
膀胱腫瘍は再発率が高く、追加治療の必要がなくても定期的に内視鏡検査を行う必要があります。
BCGの膀胱内注入は退院後に外来で週に1度、6回投与を行います。

合併症は?

① 血尿

膀胱粘膜を切除するためほとんどの症例で術後、尿に血が混じります。
まれに膀胱からの出血が多いと輸血を要することがあります。

② 発熱、感染症

手術によって膀胱粘膜に傷が生じます。また、内視鏡を尿道から挿入するため微小な傷が尿道に生じます。感染症の予防で抗生物質を点滴投与しますが、傷に細菌が入り込み感染症を起こすことがあります。

③ 排尿障害

手術で尿道に内視鏡を挿入します。また手術後は数日間、尿道カテーテルを留置します。このため尿道に一時的にむくみが生じ、排尿しづらい状態になることがあります。非常にまれですが、手術数か月後に尿道狭窄を起こすことがあります。

④ 膀胱穿孔

手術によって膀胱に穴があいてしまうことです。
膀胱粘膜が非常に薄い場合や、腫瘍が深く浸潤している症例に起こることがあります
小さい穴であれば尿道カテーテル留置にて自然に閉じますが、まれに開腹手術を要することがあります。

筋層浸潤性膀胱癌の治療

我々の目標は「よりよいQOL(生活の質)でより楽しい人生を送っていただくこと」です。
残せる膀胱は積極的に残すよう努めます。
全摘となった場合には新膀胱を作成し、自排尿を可能にします。
筋層には血流が多いため、筋層浸潤がんは転移の可能性が高くなります。
幸いにして転移のないことをCT等で確認できた場合、根治を目指した治療を行います。
最も根治性の高い標準治療は術前化学療法+膀胱全摘術です。
術前化学療法の詳細は膀胱がんの化学療法の項目をご参照ください。
腫瘍の数が単発で、5cm以下のもの、画像検査で膀胱壁外浸潤を認めない等の条件を満たす場合、化学療法+放射線療法による膀胱温存療法も積極的に行っています。

膀胱全摘除術

一般に浸潤性がんの場合に行われますが、表在性であっても、悪性度が非常に高いがん、再発を繰り返すうちに悪性度や深達度が上昇するタイプ、BCG膀胱内注入治療に反応しない上皮内がんの場合などにも適用されることがあります。
 病理組織検査の結果、浸潤性がんと判定された場合は、内視鏡的切除術では切除しきれず、がん細胞を取り残していることになります。肺や肝臓に転移がない場合は、膀胱を摘出する、膀胱全摘術が標準的治療法となります。その場合、膀胱周辺のリンパ組織も切除します。また、尿を体外に出す尿路変向術(次項参照)も併せて行われます。
 男性なら膀胱・前立腺、女性なら膀胱・子宮を一塊に摘出します。
膀胱全摘術は膀胱摘出・リンパ節郭清・尿路変更の3部構成であり、手術は平均6-7時間かかります。そのため、周術期の尿路感染や腸閉塞といった合併症が多いのが欠点です。
まだ全国的に開腹手術を施行している施設が多いのが現状ですが、当院では腹腔鏡下膀胱全摘を専門に行っております。腹腔鏡下膀胱全摘は開腹膀胱全摘と比較して小さな創で痛みが少なく、早期の離床ができ、周術期の合併症が減ると言われています。
当院では2013年に本格的に導入してから、5年で約100例の腹腔鏡下膀胱全摘の経験があります。

図5:膀胱全摘術

図6:腹腔鏡下膀胱全摘術(イメージ図)

側臥位で手術を行います。
皮膚に開けた3~4ヶ所の穴からカメラと細長い手術器具を使用して、体外操作で腫瘍とともに副腎を一塊にして摘出する手術方法です。当院では50例以上の腹腔鏡下副腎腫瘍手術症例を経験しております。手術は全身麻酔と硬膜外麻酔を併用して行い、約3時間で終了します。
個々の患者さまにより違いはありますが、一般に手術後は以下のような経過をたどります。

尿路変更

膀胱を取り出してしまうと、腎臓で作られた尿を体の外に出す新しい出口や新しい膀胱を作成しなくてはなりません。尿の通り道を変えることを尿路変向と言います。

現在当院で行っている尿路変向は、

  • 回腸新膀胱
  • 回腸導管
  • 尿管皮膚ろう

回腸(小腸の一部)を使用するか、排尿が自分の意思でできるかなどの違いがあり、それぞれに長所・短所があります。
当院では基本的に回腸新膀胱を第一選択としていますが、最終的にどの方法を選択するかは、がんの部位と悪性度、患者さんの希望、年齢や体の状態を総合的に判断して相談しながら一緒に決めていきます。

図7:尿路変更の種類

図:尿路変更の長所・短所

当院における膀胱全摘術の年次推移

千葉県における膀胱がんの治療件数(2015.4-2016.3)

手術件数は第2位、そのうち膀胱全摘術33件は千葉県No.1です。
出典:https://caloo.jp/dpc/disease/368/12#achievement

膀胱がん(尿路上皮がん)に対する抗がん剤療法

化学療法を使用する状況として3つの状況がありますが、主に使用する状況としては1.と3.の場合です。

  • 術前化学療法
  • 術後補助化学療法
  • 救済化学療法(転移が出現ないし初診時から転移を有する場合)

いずれの場合も第一選択はGC療法(ゲムシタビン+シスプラチン)です。
原則的に入院の上術前なら3週間=1コース、救済なら4週間=1コースのレジメを3コース施行します。
副作用として一般的な消化器症状(嘔気、嘔吐、食思不振、便秘)や骨髄抑制(白血球、赤血球、血小板数の減少)、脱毛、腎機能障害等があります。主にシスプラチンによる副作用です。(詳細は主治医から説明いたします。)
また、2018年1月より、免疫チェックポイント阻害薬のキイトルーダ®が保険適応になりました。自身の免疫細胞を活性化させ、抗腫瘍効果を狙うという新しい薬剤です。初回は1泊2日の入院で導入、それ以降は外来で投与可能です。